「やまさん」こと、おちゃのこ山崎です。

タイトルには「五月晴れ」と書きましたが、もともとの意味は梅雨の間の晴れ間のこと。
陰暦の五月は、梅雨の真っ最中だったのですね。でも今ではそんな故事は忘れられてしまい、薫風さわやかな初夏の晴天を表す言葉として、立派に市民権を得ています。

市民権といえば、「エコ」もそのひとつ。あちらこちらで「地球温暖化」「温室効果ガス」などの言葉がささやかれ、当初は意味不明だった「エコ」も、次第に人々の間に浸透しつつあります。いつまでも化石燃料をエネルギー源とできない事情もあいまって、「エコ」を上手に商売に利用しているところがたくさん出てきていますね。

会社の電気はいちいち消すな　コスト削減100の秘策

坂口孝則 著　光文社新書

777円 (税込)

なかなか扇情的なタイトルですが、これは奇をてらってつけたものではありません。本書は、メーカーの調達部門で活躍し、「調達のプロ」と呼ばれる著者が企業経営者とビジネスマンに贈る、上手なコスト削減の虎の巻なのです。

「多くの企業・個人が現在、間違った節約・コスト削減手法を進めている。効率化やカイゼンでは利益はあがらない。アウトソーシングは、むしろ利益を減少させる。決算書を読みこなせても、それは儲けにつながらない」

これは、本書の「はじめに」の冒頭に書かれている言葉です。世の中には利益アップの方法を指南した本が山のようにありますが、それらの多くが嘘っぱちであると著者は主張しています。

たとえば大流行のアウトソーシング。従業員がやっている作業を分析し、時給と労働時間からコストをはじき出すと、たいていはアウトソーシングのほうが安いことになります。そこで経営者は喜んでアウトソーシングに走りますが、しばらくしてみるとかえって収支が悪化していることに気づきます。

それはなぜかというと、アウトソーシングした分の人件費が浮いていないからです。固定費はそのままで費用が増えれば、赤字になるのは当然。「そっちが安いから」といって、簡単に従業員を減らすことはできません。トヨタのカイゼンを取り入れたにもかかわらず、日本郵便が劇的に収支を「改善」できなかったのも、固定費が下げられなかったためです。

同様に、著者は「決算書知識は役に立たない」と言います。「決算書は税金の支払いのためにあるものなので、必ずしも商売の実体を表していない」からです。経営者なら誰でも、決算期に税金対策や社会的信用のため、ある種の「操作」をした経験があるでしょう。だから、いくら決算書に詳しくなり、ピリピリしながら数字を追いかけても、利益が増えるわけではないということです。

ただし、いまの社会情勢や市場の現況では、簡単に売上を伸ばすことはできません。利益は売上－費用ですから、売上が伸ばせなければ費用を減らすしか利益を確保する方法がないというのも、また事実です。

著者の結論は、「楽しみながら、実効性のある節約をしよう」というものです。そのために本書の後半は、著者が提案する節約アイデアが100本、列挙されています。

たとえば、ある企業は10時間以上のフライトで出張する場合にビジネスクラスの使用を認めていましたが、「エコノミーを選択した社員には5万円のキャッシュバック」という施策を導入することで、1フライトあたり25万円の節約に成功しました。社員が喜び、会社も得をするアイデアです。

また、本書のタイトルにまつわる話ですが、「いちいち社員に手で消させるのではなく、人がいなくなって5分経ったら自動的に部屋を消灯するセンサーをつけるべき」と著者は主張します。従業員のやる気を削がず、「しくみ」で節約する。これこそが経営者の取るべき道であり、本物の「エコ」として社会に胸を張れるポリシーというわけです。

「うちには節約なんて必要ない」と思っていても、一読の価値がある本です。