「やまさん」こと、おちゃのこ山崎です。

開花宣言からの冷え込みで、今年の桜は長い期間咲いてくれています。おかげで花見の幹事は予定が狂って大変だったようですね。
さて、気候がよくなったこれからは、いよいよ不況脱却の活動が本格化します。大企業は3ヶ月先あたりから業績が回復し始めるとの観測が出ていますが、みなさまのところはいかがでしょう。
あのイチロー選手も胃潰瘍になるくらいですから、ヒットを打ち続けるのは大変です。でも、ビジネスの現役でいる限り、負けるわけにはいきません。夜風に吹かれながら気分転換をして、明日の妙策を探ってみましょう。ほら、空に満月が出ていますよ。

調べる技術・書く技術

野村 進 著　講談社現代新書

777円 (税込)

最近流行の幅広帯には、著者近影とともに「これがプロの『知的生産術』だ！」のキャッチフレーズが大きく打ち出されています。この本は、ノンフィクションライターとして数々の賞に輝き、現在は拓殖大学国際学部で教授として教鞭をとっている著者の奥義をまとめたものといえるでしょう。

内容の概略を紹介するために、目次を抜粋してみます。

第1章　テーマを決める
第2章　資料を集める
第3章　人に会う
第4章　話を聞く
第5章　原稿を書く
第6章　人物を書く
第7章　事件を書く
第8章　体験を書く

要するに、ノンフィクションを書くためのノウハウが、ステップ by ステップで示されているわけです。

「メルマガを書くのに、そんな大層な本はいらないよ」と思うかもしれません。たしかに、ネットショップオーナーのお立場では、本書のすべてを熟読する必要はないでしょう。しかし、細かい部分はいろいろと参考になります。

たとえば「テーマを決める」の中には、次のような表現があります。 「ただし、絶対に不可欠な条件がある。『自分なり』の『自分』とは何か。それを突き詰めて考えておくことである」

お客さまに愛されるネットショップは、多くが「個性」を前面に出し、それを受け入れてもらっています。ではどうやって個性を出すのか。その前に、自分のお店の個性とは何かを考える必要があるというわけです。それが明確になっていれば、サイトやメルマガに「ブレ」がなくなり、お客さまとの確かなキャッチボールが可能になります。

「原稿を書く」という部分では、いかにして相手に伝わりやすい文章を書くかという手法がとりあげられています。その中でも、作家の宇野千代の言葉が引用されているところを紹介しましょう。
「毎日書くのだ。書けるときに書き、書けないときに休むというのではない。書けない、と思うときにも、机の前に坐るのだ。すると、ついさっきまで、今日は一字も書けない、と思った筈なのに、ほんの少し、行く手が見えるような気がするから不思議である」

書くためのコツの1つとして、著者は「書き出しに全体の7、8割のエネルギーを注げ」と言っています。「書き出しさえ決まれば、文章はおおむねスムーズに流れていく」というわけです。「書き出しで見放されたら、あとにいくら良いことが書いてあっても、読んでもらえない」というのは、ノンフィクションでもメルマガでも同じでしょう。

そして「自分の書いた文章を読み返すときは、必ず声に出して読むこと」と、音読を勧めています。なぜなら、声に出して読むことで、文章のリズムがはっきりわかるからです。「自分の書いた文章を声に出して読むことは、自分なりのリズムに言葉を乗せることだ」と著者は言います。「あなたの文章の持つリズムこそ、あなたの個性である」という言葉に素直にうなずくことができれば、読んでもらえる文章が書けるようになるはずです。

書くための技法のみならず、プロのライターがどんな仕事の仕方をするのかがよくわかる、真面目に書かれた好著です。