ネットショップのコンサルを24年もしていると、こんな質問を何度も受けたことがあります。
「何を売るのが一番良いですか?」
「売りやすい、売れやすい商材って何ですかね?」
「誰でも買うものって何ですかね?」
皆さん、家業があったり、売りたいものがあって今のご商売やお店を経営していても、自由に新しい店をやるならどんな商品が良いのか? 何がネットショップとして売りやすいのか? 多くのお客様が買ってくれそうか? を常に考えていらっしゃいます。
例えば、アパレルであれば多くは男物か女物かに分かれていますし、年齢層や好きなファッションの傾向も違うので、世の中のすべての客層を100とした場合、お店のターゲットとなり得る人は多くても10くらいかそれ以下でしょう。
趣味のお店(釣具店とかゴルフショップ)などは、性別や年齢ではなくとも、その趣味が好きな方で絞れば、やはり100人のうち10以下でしょう。
でも、食品店などになると、老若男女、食べ物を食べない人はいませんので、嗜好の偏った食品でなければ、最高では100人のうち100人がターゲットになりうる可能性があります。
そこまでではなくとも、50人以上が見込み客になり得るようなお店も多いでしょう。(飲料のお店、お菓子のお店、フルーツの産直店など)
食品以外では寝具店(布団、枕、ベッド)は寝ない人はほぼいないですし、ホテルや旅館、自宅と実家など人口1人当たりで複数個の寝具が世の中にはあって、それが随時老朽化して買い替えられているのでかなりの市場規模だと思われます。
単価的にも、かさ高さや重さ的にも、宅配で届けてもらうのに向いている商材ですので、とても「通販・ネットショップ向き」な商材だと思います。
食品、寝具以外で万人がターゲットになりそうな商材はと考えると、文房具があげられます!
日本ではほぼ100%に近い人が義務教育を受け、文字を読み書きします。ペンや鉛筆、ノートやメモ帳を持ってない人はほとんどいないでしょうし、それどころか1人で何本、いや何十本、ヘタすれば何百本もの筆記具が家の引き出しやペン立て、ペンケースに眠っているのではないでしょうか?
ペンと紙だけでなく、どこの家にもカッターナイフや糊や付箋紙、ステープラー(ホッチキス)や定規、ハサミ、クリアホルダーやファイル、テープ、修正液や修正テープ、クリップなどさまざまな文具類が多数眠っていますし、既にあるのがわかっていても、ついまた新しい文具を買ってしまったなんてことは多くの方が経験しているのではないでしょうか。
お子さんがいる家ではなおさら、山のような文具があると思います。
家だけではなく、学校にも、オフィスにも備品としてたくさんありますし、記念品や販促品として配ったり贈ったりされるものも大きな市場だと思います。
ただ、寝具と違って小さくて軽く、売ってるお店も多かったり、タダでもらえるものもありますので手に入りやすく、ネット通販でわざわざ探して買うか? となると実店舗優位型の商材と言えるかも知れませんね。
昨今では「文具マニア」「文具愛好家」と呼ばれるような、文具を集めたり、珍しい文具を比較使用したり、買い集めて楽しんだりするコレクターも多いようです。(比較的低価格でコレクションできる趣味)
また私などは気に入ったボールペンは至るところに置いておきたいので、大人買い(数十本)して家の各部屋、オフィスのペン立て、よく持ち歩くすべてのバッグ、車のサンバイザーにまで配置しています(^^;)。役所や金融機関など書類に記入が必要な場所に行くときも、備え付けのペンは使わずに、必ずマイお気に入りペンを持参して書きます。
ただただ、書き心地が良くてストレスフリーだから。
そこまでではなくとも、皆さんもお気に入りの文具があったりしませんか?
さて、今回のお店はいわゆる「町の文具屋さん」。
今年、おちゃのこネットにオープンしたばかりの新規店さんですが、実は来年、創業100周年を迎えられる老舗の企業さんです。
しかも、日本を代表する歴史あるあの町! 京都の文具店さんです。
まだまだネットショップ歴は短く模索状態ですが、ポテンシャルは高そうです!
では「ダメ出し!道場」始まりです!
今年の2月にオープンしたばかりの文具屋さんということで、とりあえずオープンを優先したのだろうなという感じ。
ズバリ言わせてもらうと、これといって何の特徴もない町の普通の文具屋さん? いや、普通の文具屋さんにあるだろうさまざまな商品もなく、商品数わずか56品。金封(ご祝儀袋)とキャラクター文具だけでは注文がないのも致し方ありません。
近所の文具屋や雑貨店、大型ショッピングセンターに行けば買えそうなものばかりでは、わざわざナカツカさんを検索して見つけて送料をかけて買いに行く動機が弱すぎます。
文具屋のネットショップだから、実店舗に並んでいるものをとりあえず一つずつ陳列すれば売れるだろうというのは甘すぎます。
馴染みだから、近所だから、通りがかりのついでだからという実店舗のお客様と違って、ネットのお客様は世界中のネットショップに瞬時に行き来して好きな店で買うことができるのです。
わざわざ、送料をかけてまで「取り寄せたい」だけの理由・動機を作ってあげなければ買ってはもらえません。
多くの初心者ネットショップさんがつい忘れている事実
→ ネットショップは「通信販売業」であるということ。
重たいものとかかさ張って運びにくいものや、料理など今すぐ家に届けて欲しいもの以外は、近所に出かければ買えるものは送料に見合う価格でなければなかなか買おうと思いませんよね。
缶コーヒー1缶だけ、ニンジン1本だけ、をわざわざネットで買わないように、鉛筆1本だけ、メモ帳1冊だけに送料を数百円かけて知らない店を検索してまで買うお客様はめったにいないものです。
「文具屋さん」の前に「通信販売業」としてどんな商品を企画・提案すれば買ってもらえそうか? という基本方針(戦略)が必要だと感じました。
文具のナカツカさんは、京都市の中西部(金閣寺の南、龍安寺や北野天満宮など名所旧跡のあるエリア)にあり、来年で創業100年を迎える老舗の文具屋さんです。
創業は大正末期、日本が海外からの影響を受け急激に発展していた時代。今の店長さんの曽祖父(ひいお爺様)が和洋紙卸売業として開業され、戦後1950年に現在の「天神御旅商店街」に文具店を開業、日本の経済発展とともに、事務機販売なども手掛け官公庁や法人需要も得て成長。
現在は3代目の現社長(92歳)と4代目の現店長姉妹で地元に根付いた文具店として経営を続けてこられているようです。
来年の100周年に向けて、昨年、実店舗を新装し、ネット販売も! とおちゃのこに出店。文具屋としてはプロフェッショナルですが、ネット販売は超初心者として現在試行錯誤中…。
まずは、実店舗では好評の代筆・筆耕を活かした「金封」(御祝儀袋)の名前や金額の無料代筆サービスを主力商品にと目論むものの、なかなか受注できず。
その他は人気のキャラクターもののメモ帳、レターセット、雑貨文具など展示するも売れず。
お店をどう認知させれば良いか、悩んでおられます。
1点1点を挙げれば、写真が小さい、キャプション(写真の解説文字)がない、商品名にキャッチ・特徴がないなどテクニック的な課題もまだまだレベルが低く、これからだと思います。
例)御結婚用金封(金赤鶴) [9R]
https://bungu-nakatsuka.ocnk.net/product/28
御結婚用金封 という商品名にされていますが、オプション選択では御出産、御入学、御入園、御就職、御祝など選べますし、ウリである「手書き代筆無料」もアピールできるように商品名を
ご祝儀用金封(金赤鶴)(結婚、出産、入学、就職、お祝い)手書き代筆無料
のように変えると、よりわかりやすく、また検索対策にもなります。
実店舗の棚品名のように面積が限られている訳ではありませんので、短くなければならないと思い込まずに、品名を読むだけで商品の特徴やウリまでわかるようにするのがネット商品名の付け方のコツです。
商品写真も、1枚目は金封の写真のみ、2枚目で手書き代筆無料のキャプションと手書きサンプル、3枚目でクローズアップ写真ですが、1枚目の左右の余白にも、3枚目のアップ写真にも「手書き代筆無料」を入れられると、ひと目でサービスの魅力もアピールできますし、文字のクオリティもわかりやすいと思います。
画像サイズは3枚目の拡大写真くらい(800pxに合わせて良いと思います。(特に2枚目の写真が小さい)
通販は直接手に取って確かめられないですから、拡大写真は手に取って目の前30cmに見えるくらいの解像度を意識しましょう。
3枚目の写真は和紙や水引の紐の凹凸感、文字の細部まで確認できてとても良いと思います。
できれば4枚目、5枚目、6枚目に裏面や中の封筒の様子も撮影・掲載しましょう。すべてを見せることで、実店舗でもなかなか確かめられない細部まで確認できる→実店舗超え→通販動機になり得ます。
とにもかくにも、まだ出店したばかり。
日々考え! 日々アクション! 日々改善!
撮影やページ作りの基本はできていますが、商売や商品そのもの(誰に何をどう売るか?)がまだほとんど空白です。強みを洗い出し、軸となる商品と売り方の勝ちパターンを1つずつ築いていきましょう。
仕入れ商品をただ右から左へ掲載すれば売れるとは思わないこと!
インタビューでお店(会社や仕入先、スタッフ、町)を取り巻く環境についてお聞きしましたが、やはり最大の特徴は日本で最も輝く地名ブランドである「京都」の文具屋さんであるということ。
歴史ある町京都では、創業100年程度ではまだまだ老舗とは言えないなんて話も聞きますが、国税庁の調査では10年続く会社でさえ100社に6社しかない。それが100年続くとなると1万社にわずか2〜3社程度という貴重・希少さだそうです。
文具のナカツカさんはまぎれもない「老舗」と言えるお店・会社です!
その上、平安時代〜室町〜戦国〜江戸〜明治維新〜現代へと京都にまつわる多くの史実が山のようにあり、芸術や文化にまで広げれば、京都は正にコンテンツの宝の山! 今年は大河ドラマも京の都が舞台。しかも紫式部が主役で文筆との繋がりも深い。追い風も吹いています!
そもそも文房具とは筆・墨・硯・紙の四つを指す言葉だそうですから、その辺りにスポットライト浴びせてみるだけでもネタや商品企画案がたくさん出てきそうですね。
また、ナカツカさんがある「天神御旅商店街」とは、北野天満宮(天神さん)のお祭りの際におみこし(神輿)が神幸(お出まし)になり、巡行の途中で休憩され留まる御旅所(おたびしょ)がある場所。
北野天満宮といえば学問の神様。文具との繋がりも深いですから、とても縁起の良い文具店と言えるのではないでしょうか。
天神様でご祈祷を受けた合格祈願や学問成就のオリジナル文具を企画するなど、アイデアも膨らみます(^-^)
北野天満宮以外にも、御所(京都御苑)に二条城、東山、北山、嵐山、神社仏閣、名所旧跡が山ほどあります。イベントやテーマパークなども、祇園祭に葵祭に時代祭、太秦映画村、松竹撮影所、多くの美術館や博物館、記念館も他の地方では考えられないくらい、たくさんあります!
また西陣や京友禅、和紙や筆、宇治茶、伏見の日本酒、和菓子に京料理、京野菜、舞妓さんや芸妓さん、扇子や団扇、さまざまな工芸品、一方で新しいもの、洋食、フレンチ、喫茶などの西洋文化、ラーメン激戦地、日本を代表するハイテク企業も京都には多くありますし、歌舞伎や芸能、妖怪伝説、京アニさんやアニメ、ドラマ、時代劇などの聖地巡礼地など新しい近代、現代文化の名所も数え切れないほどあります。
そして大学、専門学校なども多く学生さんの街としても有名ですね。
本当に、こんなに「ネタ」「コンテンツ」が幅広く山盛りにある場所は日本ではもちろん、世界的にも超貴重なのではないでしょうか!
通常だと地方や遠くのネットショップをわざわざ訪ねることはなかなかハードルが高いのですが、観光地京都は世界中の人が訪れやすい街でもあるので、実店舗への来店さえ促せる素地があります。
こうしたとても恵まれた環境下にある京都…
「その京都で100年続く文具屋さん」
もう、なんでも商品企画できそうですね!(^^;) うらやましい!
中にいる人にとっては当たり前の京都なのでしょうが…
外の人たち(外国人を含めて)から見れば、「京都の〇〇〇」「京の□□□」は何でも「特別」に感じられる超超超超超スーパーブランドなんですよ!
ただ、それだけにエセ京都人、にわか京都企業が作った薄っぺらい京都商品ではダメなんです。すぐ見透かされます。
京都の本物を知る京都の老舗企業が、京都の素材、人脈、地脈、繋がりを駆使して生み出した「京の逸品」が望まれるところです。
92歳の社長の人脈はきっとナカツカさんの「宝物」です。
京都育ちで京都在住の店長ご姉妹の友人、知人、ご家族のネットワークにも「京の宝」が山ほど埋もれているような気がします。
京都の文具=「#京文具」「#京文具のナカツカ」という切り口で、既存商品ではなく、一工夫、二工夫した新たな文具商品企画と提案にぜひチャレンジしていただければと思います。
個人向けに1点1点単価の安い物を通販するだけがネットショップではありません。法人、団体をターゲットにオーダーメイド、セミオーダーでオリジナルグッズを販売するようなB to Bのネットショップもきっと成り立ちます。
「京都ブランド」で商品作りができれば、全国の百貨店や京都フェアなど催事、イベントからのオファーも期待できます。
まずは自社に眠る「宝探し」から初めてみましょう!
応援団 or 軍師が必要な際はぜひお気軽にご相談ください(^^;)
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SNS活用について
現在のInstagram アカウントでの投稿の質を高めてリール動画を増やし、写真投稿もハッシュタグを増やし、「#京文具」「#京文具ナカツカ」を定着させましょう!
「和文具」「京都の文具」などは一般名称としていろいろな店が使っていますが「京文具」という言葉はありそうで、意外にまだほとんど使われていません。
ただ、使うだけでは実が伴いませんので、ぜひ「#京文具」と言えるような商品企画、シリーズ化を期待したいところです。
例)日本画で使う絵具と水彩筆ペン、和紙(巻いた奉書や画用紙)の絵手紙セットとか…
例)手軽な細筆+硯+墨+和紙+下敷き+ケース のセットで俳句や和歌や日記、随筆などが手軽に始められるセット
下敷きやケースはありきたりのものではなく、京のきもの生地や柄を活かした華やかで雅な(お洒落)なものにする
例)筆ペン講座(実店舗でやっている講座のオンライン版)
例)学生さん向けのオリジナル名入れ、ロゴ入れ文具提案(部活、サークルなど小規模団体活動の小ロット制作可能グッズ)
例)舞妓さん、芸妓さん風の団扇や名刺のオーダーメイド
お客様のご依頼の名前を入れてギフト商品に
例)京都にまつわる歴史上の偉人、著名人キャラクター文具
(著作権などがない古い有名人物のファンは多い)
例)京都の多くの神社に祀られている八百万の神様に関連する縁起物グッズ
(各神社でご祈祷してもらう)ご利益付箋紙とかご利益ノートとか
繰り返しますが、京都で100年続く文具屋さん は特別でスゴイことですよ!それを活かさない手はありません。他の地域の文具屋さんや京都でもポッと出の新参企業がやりたくても簡単にはできないような人脈、地脈、仕入先を活かした商品企画や販売マーケティング戦略にぜひチャレンジしてみてください!
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その他具体案、具体策でお悩みの場合はまたお気軽にご相談ください。
以上。「ダメ出し!道場」でした!
2月にOPENしてから1度も注文がなく、このサイトでWEBショップを開いているのをどのような手段でわかってもらえたらいいのか悩んでいます。ちなみにHP・InstagramにおちゃのこサイトのWEB案内はしています。
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