次世代型農場でんでん村

カテゴリ:食品、飲料

次世代型農場でんでん村

ミニトマト、発泡酒がまったく売れる気配がないです。
現在農閑期で7月にミニトマト販売を再開しようと思っていますが、何を準備していけば良いか分かりません。
予算がかぎられているので、なるべく費用をかけずに販促したいです。

近所の店で買える物がネットで売れるのか?

「そんなもん、売れるわけない!」

私がeコマース・ネットショッピングの世界に入った1997年〜2000年頃にはそう言われていました。

でも「ネットで当たり前のようになんでも売り買いする」、そんな時代がじきに来る! そう信じてネット販売に取り組んでいました。

当時のインターネット回線はモデムという機械を通じて、毎回電話回線を使って接続し、ちょっと画質の良い画像だと、写真1枚を表示するだけでも何分もかかっていた時代。ひょいひょいっと商品を選んでお買い物! なんてわけにはなかなかいかないインフラ環境でした。

近所のお店で買えるような物を売っているネットショップもほとんどなく、成果の出ているショップは皆、何らかのコダワリのある「専門店」でした。

専門的な商品だからこそ、じっくり吟味して遠方から取り寄せる。
より詳しく、より熱い思いを持った店長のお店から買う。
それがネット販売、eコマースの典型的パターンでした。

ただ、技術の進歩は速く、回線の常時接続、光回線、PCの高性能化、スマホの登場→進化、SNSやYoutubeの浸透でインターネットもネットショッピングも、もはや特別なものではなく、一般の消費者にとっても日常になってきました。

ネットで洗剤やティッシュやコーヒーやお茶、野菜やお肉、お魚、お惣菜などの消費財を買う人を見かけても、当たり前であり、特別な事には思わない時代になってきました。

でも、どんなお店でも容易に消費財が売れるようになったというわけではなく、そこには商品や売り手を選ぶパターンができてきています。

専門的な商品、希少な商品などは情報やノウハウ、品揃えやアフターサービスなどの充実した専門店で買うけれど…

日用品、消耗品、汎用品、量産品、日々食料品など近所のスーパーで売っているような日常の消費財のお買い物となると…
Amazonや楽天、Askulやロハコなど大規模で大量の品揃えと在庫で迅速な物流体制を備え、かつ安価なショップが優位となっています。

そしてお客様のご近所にあるリアルのスーパーやドラッグストア、ホームセンターなども見えないライバルです。

要は、消費財のeコマースには物流も含めたある程度の「規模感」が必要で、スケールメリットを生かしてコストダウンし、値頃感、価格競争力がないとなかなか成功しないということです。

そりゃ、どこでも買える物なら、早くて安くて安心できるところで買いたいですもんね。

でも、ちょっとこだわりのあるモノ…
たとえば、自然派の洗剤だとか、オーガニックの野菜だとか、珍しい品種のお米やお茶やコーヒーだとか、機能性の高い雑貨や衣料品などであれば、大型量販店でなくとも、小規模なネットショップでも専門性のある情報や組合わせや用途提案、お届け方法など付加価値を添えれば、大手に負けない可能性も十分にあります。

いえ、付加価値がなければ大手には勝てません。生き残れません。

こうしたことを考えるときのポイントは…
あなたのお店のお客様は実は「何」を買っているのか? ということをあらためて考えてみることです。

「物」だけを買っているのか? 価格だけを求めているのか?

「ウンチク」「ノウハウ」「情報」「専門知識」「便利さ」「安心」「時間(速さ)」

例えば…
「お茶っ葉(日本茶)なら何でもよいから安価な物を」というお客様なら、近所のスーパーやAmazon、Askulなどで500gお買い得パックのような安価で適当な物をひょいっと買うでしょうが、産地や品種やグレードにこだわりのある方なら、ネット検索して日本茶の専門店で条件に合った物を買う可能性も高いでしょう。

加えて1杯分ずつ真空パックのティーバッグになっていて賞味期限が長いとか、持ち運びに便利、衛生的で安心など「お茶の葉」という本質だけでない付加価値に割高でもお金を払ってくれるわけです。

「PETボトルのミネラルウォーター」を買いたいお客様の場合、優先順位が価格>品質であれば、近所のドラッグストアやスーパーで買うでしょうが、品質>価格だったり、利便性>価格であれば、珍しい種類の水や重い水を玄関先まで届けてもらえるネット通販に優位性ありです。

「便利さ(家にいながら)」や「時間(早く入手)」「労力(重い、大きいモノを家まで運ぶ)」「お得(ポイント)」などの付加価値込みで買うお店を選んでいるケースも増えてきていますよね。

生鮮食料品などはどうでしょう?
「今夜の夕食にはサラダにトマトを添えたい」と近所のスーパーに行けば、トマトコーナーには大きなトマトからミニトマトまで大体は決まった品種、決まった産地の物が数種類は売られています。

「トマトなら何でもよい!」であれば、特売の安いトマトを。孫たちが遊びに来る時は、ちょっと高いけど糖度の高いフルーツトマトを。

このくらいなら近所のスーパーでこと足りますが、「ピザ釜でピザを焼きたいので酸味の強い水分の少ない品種を」とか、「家族の健康を考えて、高リコピンのトマトを」とか、「どうしても特定の産地のトマトを!」などとなると、ネットショップを検索するしかありません(^^;)

あなたのお店が特長のない普通のトマトを売っているなら、よほどお買い得な値段で販売しても売れるかどうかですが、なんらかの付加価値(特に甘い! とか特に栄養価が高い! とか)があれば、それを求めてマッチするお客様もきっといるはずです。

さてさて今回のお店は…
そんな付加価値の高いミニトマトの産直ショップさんです。
2024年の今年オープンし立てのホヤホヤのお店!

それでは「ダメ出し!道場」始まりです!

第一印象:誰に向けてのどんなお店か? が分かりにくい


EC仙人 太田

メインの横スクロールバナーでは「次世代型農場でんでん村」と真っ赤なミニトマトの写真に「うるつやトマト」のロゴ、農場の緑を背景にパッケージを持った店長とスタッフの笑顔写真で印象は良いですが…

トップページの看板画像は「株式会社ビレッジ開発」となっており、どこのどんな会社が誰に対して何をアピールしたいのか? がパッと見では分かりにくい印象です。

まずはファーストビュー(一画面内)に「私たちでんでん村とは?」「何をメインに何を売っているのか?」が数秒で伝わるキャッチコピーを載せたバナーを用意しましょう。

ビレッジ開発とでんでん村の関係も初見では「?」です。
あえてビレッジ開発の名前を出す必要があるのか?
このサイトは法人向けに「ビレッジ開発の企業アピール」が目的なのか?
それともあくまで「うるつやトマトの販売」が目的なのか?
ターゲットは個人客なのか? 業者(バイヤーや料理人)なのか?
今一つ伝わりません。

シーズンオフということで現状は仕方ないですが、メインのミニトマト「うるつやトマト」は SOLD OUTで、売っているのは「白麹トマトサワー(発泡酒)」1種類のみ。販売の売り場としては弱すぎます。

顧客目線で見ると「売る気あるの?」と見えてしまいます。
せめて、メインのトマトの先行予約販売などされてはいかがでしょうか?

そして、今一度、「このおちゃのこショップでは何を目的とするのか?」
を明確にして改善していきましょう。

インタビューで浮き彫りになったこと


EC仙人 太田

でんでん村さんの責任者である下村さんにお電話でインタビューさせていただきました。

でんでん村さんはいわゆる「農家の産直サイト」とはちょっと違います。愛知県安城市にある株式会社ビレッジ開発さんという不動産業がメインの企業さんが2022年から手掛けたベンチャー事業で、「次世代型スマート農業」でミニトマト栽培を行っておられます。

下村さんはビレッジ開発さんの取締役で、この新規事業の責任者。
取締役農業部長として自ら現場で設備の管理、栽培、収穫、出荷、マーケティング〜営業、Webの管理まですべてを指揮されておられます。

でんでん村の農場はお隣の刈谷市にあり、同じく刈谷市の日本を代表する自動車部品や製造機械の会社であるデンソーさんの子会社から農業用施設環境制御のシステムの提案を受けたのをきっかけに、自社で持っていた農地に、デンソーさんの自動車分野で培った幅広い技術を活かした先進的なハウス栽培施設を建て、ノウハウも学びながら、わずか2年で事業化、地元のスーパー等へ販売されているそうです。

また、育ち過ぎなどで実が割れてしまった通常出荷はできないトマトを原料に、糖度の高さを活かして、地元のブルワリーさんに発泡酒を醸造してもらい、販売しておられます。

まったくの異業種からの農業新規参入ということで、技術もノウハウも販路もまったくないところからのスタートだったそうですが、下村さんを初めスタッフも研修・勉強と相当な努力を重ねて収穫できるようになったようです。

ハウスでのミニトマトの栽培では年に数回の収穫ができるそうですが、真夏は暑すぎて通常は栽培を休止するようですが、でんでん村さんでは、今年はデンソーさんの環境制御技術を用いて夏越しでの栽培にチャレンジされているそうです。

一般的なハウスでは天窓と側窓での自然換気ですが、でんでん村では強制換気やミストでの蒸散、一鉢(バッグ)単位での植え付け本数のコントロールなどでも蒸散放熱での冷却を行い、ヒートポンプでの冷房ほどのエネルギーを使わずにハウス内の温度管理をして、トマトの樹にとって常に成長に最適な環境を整え、効率よい栽培を行っておられるそうです。

でんでん村さんのうるつやトマトは糖度が高い(糖度7、8、9度)ことに加えて、栄養素であるリコピンとGABA(γ-アミノ酪酸)の成分が常に一定以上の水準で、「紫外線刺激から肌を保護するのを助ける」リコピン、「仕事や勉強による一時的な精神的ストレスと疲労感を緩和する」GABA(γ-アミノ酪酸)という二つの機能性成分で「機能性表示食品」として消費者庁に届け出されており、その辺のスーパーで買えるミニトマトとは一線を画しています。

ただ、現状はまだまだ十分な認知を得られていませんし、地元スーパーでの販路など、機能性表示食品の強みを十分に生かした販売ができていないのが悩ましいところのようです。

健康関連の展示会で評価をいただいたり、東京方面の有名スーパーなどでの取り扱いや引き合いもきているようですので、今後の販路拡大が期待できます。

 

具体的なダメ出し&改善策


EC仙人 太田

トップページの看板画像「株式会社ビレッジ開発」と最上部の「デンソー製農業ハウスで…を削除し、

機能性表示食品「うるつやトマト」

次世代型スマート農場でんでん村

と顧客目線での強みに絞ってアピールしましょう。

デンソー製農業ハウスは同業者や業界人には興味を引くキーワードかもしれませんが、トマトを食べる顧客には直接的な魅力あるキーワードではありません。トップページの一番最初のキーワードが「デンソー製」ではSEO的にも食品であるトマトとの関連性も低く、消費者的にも機械や工業をイメージして「食欲」が減退します(^^;)

「強み」ではあっても「魅力」ではない副次的なことは、トップページではなく、でんでん村の紹介ページなどに説明するようにしましょう。

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初めてアクセスして来たお客様にとっては、まずは「うるつやトマトとは?」「でんでん村とは?」が最大の関心事であり、知りたいポイントであるはずです。

まずはこの2点を端的に説明したコンテンツを作り込みましょう。
機能性表示食品としての「栄養価は?」「成分量は?」「効果は?」「でんでん村はどこにあって、どんな農場なの?」などを補足として下記のように書いておくと、産直生産者のショップとしては効果的だと思います。

どんな人がどんな思いでやっているの?
どんな点が強みでどんな技術やこだわりがあるの?
次世代型スマート農業とは?
衛生面、安全面、環境面などのポリシーや取り組みは?
ミニトマト生産のプロとしての理念や考え方・主張など
行き過ぎたオーガニック信仰への反論・説明(自然由来が必ずしも無害、無毒ではない。菌やカビや虫の持つリスク)
次世代型スマート農業とは?
適切な農薬や化学肥料の使用に関する説明
どんな目的でどんなものをどんな基準で使っているのか?
残留農薬や汚れや有害成分の洗浄や除去、無害化について
店長やスタッフの子供達、孫たちにでも自信を持って安心して生で食べさせられる状態で出荷しているか?
コスト優先で安全を二の次にしていないか?

などなど、読めば安心してでんでん村さんを信頼してくれるようなコンテンツになればベストです。

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せっかくのトップページですから、バナーからのリンク先に説明ページが欲しいです。

次世代型農場でんでん村 → でんでん村とは? ページに誘導
うるつやトマト→機能性表示食品 うるつやトマトとは? ページに誘導
うるつやトマト新発売→商品ページへの誘導

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白麹トマトサワー(SKsour 0001) [発泡酒/2本入]
https://www.dendenmura.com/product/4

白麹とは?→白麹が古来からの焼酎造りに使われてきていること、いかに安全なものであるかの説明も欲しい。(昨今話題の紅麹サプリ被害と混同されないようにするためにも)

醸造元「Kariya 75 Brewing」とは?
でんでん村との関係やご縁、発泡酒作りのきっかけなどストーリーやエピソードなどあれば、なお良いですね。

また「お酒」として見た時に、ボトル写真だけというのはシズル感(美味しそう!飲みたい!)がまったく感じられません。
冷えたグラスに注いで、まさに口に入れる直前といったビジュアルが欲しいです!

総評

全体的に、味気なく情報不足、物語やメッセージ性不足、ビジネスライクでドライな印象です。

よくある普通の農家の産直や企業ビジネスとは違って、異業種からの新規事業、社内ベンチャー、革新的な新技術での農業、農産物工場、土のない農業、店長もスタッフも未経験からのチャレンジなどなど、そこにはさまざまなエピソードや物語、熱い思いやメッセージがあるはずですが、それらがほとんど語られたり表現されていません。

商品のスペックや価格だけで売れる商品ならそれでも良いのですが、消費者の近所のスーパーのトマトではなく、「でんでん村のトマトを食べてみたい! 買ってみたい!」と思わせるには、お客様の心や感情を揺さぶって、買ってみたい気持ちを起こさせなければなりません。

堅苦しく真面目に考えすぎて、面白みのない味気ない説明文やコンテンツになってしまっていると思います。お電話インタビューで熱く語って下さったような語り口調で、栽培育成の過程の喜怒哀楽を表現されると良いと思います。(文字だけでなく、動画や写真も使って)

下村さんはお電話でお話しした範囲の印象では、営業・マーケティング・販売よりも圧倒的に次世代型農業技術者&生産者の側面が強い印象でした。ここまでの道のりでは設備環境の構築、育成〜収穫までのウェイトが相当に大きかったとは思いますが、これからは営業・マーケティングへの力も増やしていただかねばなりません。ぜひそちらへの予算や人員・労力も確保いただき、試行錯誤チャレンジしていただきたいと思います。

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「ミニトマトのプロ」としてそのまま食べる以外の楽しみ方、料理レシピ、カクテルやドリンク、デザートスイーツなどの作り方コンテンツ(写真や動画も使って)なども欲しいところです。

社内スタッフだけでなく、近隣の飲食店さんシェフ達や料理研究家さんなど、プロの力も借りて充実させて欲しいです。
飲食業向けの営業も兼ねて、販路開拓をSNSで募集してみるのも一考です。

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SNS活用について

Instagram はリール動画を増やして新規フォロワーを増やしていきましょう。個々の投稿にはハッシュタグを怠らないように!
飲食店さん、シェフや料理研究家などをフォローして、ミニトマトについて会話する。ヒントや商談のきっかけになり得ます。

農場設備には恐らく数千万円単位での投資をなさってこられたと思います。本質的な生産インフラや商品の強みをお持ちのでんでん村さんなので、やせめてその数%でもネットでのマーケティングコストにも(有効に)投資されれば、きっかけや突破口はすぐに見つかると思います。

その他具体案、具体策でお悩みの場合はお気軽にご相談ください。

以上。「ダメ出し!道場」でした!

※上記内容は、取材当時の内容の場合があります。最新の情報はショップページ内でご確認ください。