本屋さん、書店、皆さんにとってはどんなイメージですか?
昭和の半ば、地方の田舎町育ちの私にとって「本屋さん」は、商店街にある個人経営の「〇〇書店」や「□□古書店」のイメージで、マンガ雑誌や趣味の月刊誌などを定期的に買いに行くだけでなく、文具や雑貨、駄菓子、プラモデルなども扱うちょっとしたエンタメショップでもありました。
また、学校が終わって放課後に自転車に乗って町の中心にある本屋さんまで行けば、必ずと言ってよいほど、誰か同級生や先輩後輩など「友達」に会える場所でもありました。でも先生や父兄さんにも会ったり見られたりするので、あまり油断して騒いだりもできませんでしたが(^^;)
本屋のおっちゃん、おばちゃん、つまり店主さんは「マンガのグッズ」とか「プラモデル」の作り方を相談したり、「昆虫」とか「宇宙」とか「ラジオ」や「電子工作」「手芸」「折り紙」「あやとり」などなど、子供たちの遊びや趣味に関する相談役やアドバイザー。今ふうに言えば、コンシェルジュ的な存在でもありました。
今にして考えてみれば、本屋にあったたくさんの専門書や書物が本屋のおっちゃんの情報源で、そこからいろんなことをかいつまんでダイジェストで教えてくれつつ、それらの本を薦めて子供たちとその親に本を買ってもらえるように「マーケティング」してたんですよねー。
でも、そこに押し売り感やいやらしさは全くなく、むしろ、その町の本屋さんは常に「そこに行けば何か楽しさが待っている!」エンターテイメントパラダイスだったように思います。
小学校から中学、高校と大きくなって徒歩→自転車→電車やバスと行動範囲が広がっていくと、自分の町から出て大きなショッピングセンターや、都市部にある「大型書店」に行くようになるのですが、そうなると好奇心を刺激する膨大な数と種類の書籍に魅了され、読みたい本や買いたい本にお小遣いが全然追いつかない状態に常にありました。
そうなると、本を買わずに無料で借りられる「図書館」という選択肢も検討するようにはなったのですが、都市部からバスや電車で1時間以上離れた田舎町に住んでいた私にとっては交通費を使って頻繁に図書館に通うのもなかなか大変で。
次の選択肢はとにかく安く本が買える「古本屋さん」でした。新刊や雑誌、ムック本など最新のトレンド情報が載った本はありませんが、それほど情報鮮度は関係ない趣味系の専門書、HowTo本などは古書店によっては充実しておりました。
また高校生当時、何名か好きな作家さんがいたり、古典落語にはまって文庫本を次々と読んでいたので新刊書店さんの五分の一程度の価格で買える古本屋さんはとてもありがたい存在でした。
思い出すと、いきつけの書店や古書店は10軒程度あったと思います。いずれもしょっちゅう通っていたので店主と顔見知りになって、欲しいジャンルの本を探してもらったり、オススメの本を取り置いていてくれて行くと声をかけてくれたり。
また今にして思えば、数少ない「大人と会話できる場所」「大人に何かと相談できる場所」でもあったように思います。
本屋のおっちゃん、おばちゃんに絶大な信頼を持っていたわけではないですし、個人名も知らなければ、どんな経歴やプロフィールを持った人物であったかも全く知りませんでしたが…(^^;)
親と先生以外の「フツーの(一般的な)大人」として、「世間の象徴」「常識的な大人」として、こちらも名乗ることもなくいつでも暇つぶしの世間話や趣味のことを気軽に相談できる存在が「本屋のおっちゃんおばちゃん」だったのかも知れません。
あ、思い出した。一軒、たまに娘さんらしき若い女性が店番している古本屋さんがあって、その時はちょっとドキドキしたなー(^^;)
書店、古本屋さんは、私にとって鮮烈な思い出や印象はないけれど、ほんわか懐かしく、若き日の日々の楽しみや憩いの時間を与えてくれた場所でした。(でも、お小遣いを一番使った場所でもあったと思います。)
さてお察しの通り!?(^^;) 今回のお店は本屋さん(古書店)です!
香川県は高松市郊外ののどかな地域にあるネットの古書店さん、
その名もズバリ「香川の本屋さん」です。
店名からも分かるように特に「香川県」に関連する古本をメインにスタートされましたが、徐々に徳島県、愛媛県、高知県と四国全域→中国地方、九州、北陸、関西、関東、東北、北海道…と全国各地域に関する分類で展開されているようです。
では 「ダメ出し!道場」始まりです!
正直、第一印象は「香川の本屋さん」?
そんなに絞り込んで大丈夫? 経営成り立つほど需要あるの?です(^^;)
「香川県に縁もゆかりも無い人が香川県に関連する書籍を買う」確率はかなり低いと思われますのでざっくり人口で考えてみると、香川県の人口は令和五年12月時点で 924,620人
(香川県の公式ホームページより)。日本の人口は令和5年12月時点で 1臆2409万人。
だいたい0.75%弱(1000人に8人弱)が香川県民。
県外にいる香川県出身者の人口は不明ですが、かなり多めに考えて、仮に県内人口と同じだけいると仮定しても1000人に15人。
その全員が香川の本を買いたいわけでもないので、これ以上は未知数が多く憶測、推測してもあまり意味はない数字ですが、相当に市場規模(見込み客数)は少ないと予想されます。
一方で Amazon と楽天ブックスで「香川県 本」で検索すると、それぞれ、3635件、1760件 ヒット。
新品ならこれらサイトで買っても同じ価格か、送料で勝てないので中古本 に限定すると amazon で361件、楽天で354件。
ふむふむ、意外と大手は品揃え少ないな。
Amazonや楽天には売って無い本を揃えられれば チャンスはあるかも。
店舗名こそ「香川の本屋さん」ですが、実際には四国を初め他府県関連の書籍も随時品揃えられているようなので、ニーズをもったお客様と出会えさえすれば、販売チャンスはありそうですね。
いつものようにお電話でオーナー店長の青木大さんにインタビューさせていただきました。「香川の本屋さん」は、おちゃのこショップの屋号で、会社としては「株式会社かまんよ書店」として、書籍・古道具・レコード・CD・DVD・衣類の買い取り、販売をされています。
香川県高松市在住の青木さんは、実は香川県のご出身ではなく愛知県ご出身で、最初は名古屋のIT企業に就職されコンピュータ関連の営業職を経験。東京、香川と転勤され、香川でご当地出身の奥様とご結婚。そのご縁もあって現地で独立起業。
最初は「何でもよいから商売を!」と特に明確に強い思いがあっての本屋さん開業ではなく、「本が好きだし」と、車1台と家の倉庫から何となく始めたのだとか。何と特に仕入れルートなど調べるでもなく、町の書店で本を定価で買ってきて、そのまま定価で売ってみる(利益0円)。で、まずは商売のイロハから経験してみることから始めたのだとか!
お電話での印象も、とにかく明るくお元気で活力にあふれる感じの青木さん。あれこれ考えるよりもとにかくまずは行動してみる!というタイプのお方なのだろうか。ベンチャー、新規創業者にはもってこいの気質に感じました。
動きながら少しずつ、新書よりは古書、古書を買取の中で骨董品や中古品の買取→古物商、地元のマルシェやイベント会場への出店、ネット販売など販売方法も模索しながら展開。
現在は、自社サイト、おちゃのこサイト、Amazon、ヤフオク、ヤフーと展開されており、おちゃのこでは「香川の本屋さん」の他に、「学校の本屋さん」という教科書や指導書、参考書や学術書を専門にしている古本屋さんも運営されていらっしゃるようです。
基本的にはご自身と、書籍の整理とネットへの出品のための作業の補助のアルバイトさんだけで運営されており、常にオーバーワーク状態で大変お忙しそうです。
目の前の受注処理、出荷作業、本の清掃、整理などに追われ、古書店にとって重要な買取仕入と、何より重要な出品登録作業が思うように捗らない状態にあるようです。
また、映像商品(ビデオ、DVDなど)など手離れのよい商品は他店でも販売されるので価格競争で利益は薄く、増えれば忙しさばかりが増し、一方でレアな書籍は高い利益で売れる可能性はあるがめったに売れない。中古品ならではの1点物も多いので1ページ作っても売れればその商品ページは終了、など商品ページ制作の効率がよくない。などなど、「中古品販売業種」ならではのジレンマ、もどかしさも(当たり前ではあるが)常に悩ましい点ではあるようです。
各書籍とも、ある程度の写真点数で丁寧に撮影されているようですが、珍しい本が多く、タイトルや奥付だけではどんな内容の本なのか想像しにくい物も数多く見受けられます。
現状の掲載情報はいわばスペック(仕様)のみで、セールストークや解説は皆無です。古書店もいわばプロショップ(専門店)ですので、店主の言葉で「どんな本」なのか概要だけで
も説明文を添えてあげましょう。
実店舗と違って「立ち読み」できないネットの古書店で買いやすくするためには、概要は必要だと思います。概要にキーワードをできるだけ多く表記することで検索対策にもなり、本とお客様の出会いを助けることになると思います。
新刊書でいうところの「帯」の推薦文や店頭POPのコメントに相当する部分を店主の言葉で説明してあげる商品愛がお店の付加価値になると思います。
一見、魅力の無さそうな、魅力がわかりにくい「商品(本)」にスポットライトを浴びせて、紹介・演出して魅力を輝かせてあげる。それが専門店の店主の仕事のはずです。
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たまたま見つけたのですが、これは同じ商品では?
汚れなど程度の違いの別商品でしょうか?
「四国のおもちゃ 加藤増夫 昭和52年 四国新聞社」
https://www.kagawa-books.shop/product/1809
https://www.kagawa-books.shop/product/1502
同一商品二重登録の価格違いならば、お客様に不信感を与えかねないので注意しましょう。程度違いの商品であるならば、説明して両方をリンクしておきましょう。
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カテゴリーの見直しや追加、「香川の」「徳島の」「四国の」「九州の」という地方、地域での切り口だけでなく、今ある「食べ物の本」「陶器」「骨董・伝統」のように分野ごとのカテゴリーを「民話・神話・伝承」など増やしたり、各都道府県「出身・由来の著名人」の切り口も作れば、商品の品揃えもしやすくなりますし、著名人には一定のファン層もいるので新たな客層開拓にも繋がると思います。「映画やドラマの舞台」なんて切り口も古書以外のDVDなど映像作品の販売に繋げやすいのではないでしょうか。
例)香川県がルーツの今の朝ドラ「ブギウギ」の主人公のモデルで話題の笠木シヅコさん。古いレコードや書籍、ポスターなど倉庫には色々と眠っているようです。→売るなら今ですよ!
「香川の本屋さん」だけを見れば、想定ターゲット層の適否や規模はまだまだ未知数ですが、「株式会社かまんよ書店」として見たときにはポテンシャルはもっともっと大きいと感じます。
ただ薄利多売方式で自動化、システム化、ルーチン化を図り規模拡大を目指すのか? 高粗利適量販売型で小規模でも高付加価値で収益率のよい形を目指すのかは、青木社長の考え方次第だと思います。
現状は、日銭を稼ぐ「売りやすい商品」と、高粗利を稼げる「レア商品」のバランスをいかに後者寄りにしていけるかが当面の課題だと思います。
国道沿いの大型リサイクル書店やリサイクルショップは規模による認知度とスケールメリット、流れ作業化やシステム化によるコストダウンで「中古品販売業」としての効率化を図って成り立っているのだと思いますが、小規模な個人経営のお店が同じ方法で戦っても勝てないどころか生き残っていくのも難しいと思います。
基本的には、「ニッチに特化」して「得意分野を作り」(苦手分野はあきらめ捨てる勇気・決断)。その得意分野では、大手さんに負けないだけの情報やノウハウを持って特定ジャンルの「専門性」を武器にしつつ、市場を広げていくことです。
具体的には、香川県とか四国とか地域で絞るよりも、例えば「美術書」「陶芸」「工芸書」など大学や学校など先生や学生や研究者が多いジャンルに特に注力するとか(毎年、新入学の学生が生まれ、専門書や参考書を必要とする)。
「民話」、「神話」、「怪談」、「伝承」、「昔話」、「言い伝え」「妖怪」、「おばけ」、「もののけ」など、研究者やコレクターが多かったり、常に新たな客層が生まれているジャンルに特化して品揃えの充実を図ることをすれば、市場・見込み客層・需要の拡大も見込めると思います。
どんなジャンルを選ぶかは、青木さんの趣味嗜好や興味の強く持続できるものでよいと思います。
また、同ジャンル書籍のセット組、
例)妖怪本3冊セット
例)民話集5冊セット
例)〇〇遺跡関連2冊セット
など、お店がセット組みしてあげることで新たな付加価値が生まれ客単価は高くなり、お客様にとっては割安感や便利さが生まれるなどもありだと思います。
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また、冒頭コラムで書きましたように、書店・古書店のおっちゃん的な要素もリピーター増加には必要ですし、青木さんの明るさや人当たりのよさという【強み】を活かす方策だと思います。
具体的には「客の相談に乗る」「客と世間話をする」こと。リアルでそういう潜在ニーズを満たせる書店が絶滅危惧業種になっているだけに、スマホの「デジタル」でアクセスできながらも、「アナログ」に会話や相談できる古本屋のおっちゃんの潜在ニーズはあるように思います(手段はメールやInstagramやLINE公式アカウントなど色々)。
過去の「ダメ出し!道場」で何度かご紹介した1万円選書で有名な北海道の片田舎の「いわた書店」さんをはじめ、地方や郊外の小さな本屋さんの成功事例も数多くありますが、具体策は異なれど、共通しているのは「店主の個性と活動」にファンが付いていることです。
その過程は、決してお店からの情報発信のみの一方通行ではなく個々のお客様からの質問や相談や世間話を受け入れる仕組みや雰囲気作りと、それに対してちゃんと会話して行くことで作られているように思います。
ネットやデジタルの時代、増してAI全盛の時代。とかく何でも自動化、効率化が「正解」であるかのように報じられがちですが、買い物や消費が人間の心の欲求から生まれる行為である限りは、「買い物」には「心の充足」=「好き、嬉しい、楽しい、幸せ、よかった、満足」など人間的要素も重要だと思います。
電気代や水道代、プロバイダ料金やスマホ通信費なんてのも消費ではありますが、あまり「心満たされる楽しい買い物」ではないですよね(^^;)
少なくとも我々おちゃのこネットのオンラインショップはお客様の心も潤い満たす楽しいお買い物ができるショップでありたいですね。
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また、問い合わせや相談に関するお店の姿勢や考え方は店主の性格や考え方によって様々だとは思いますが、私の印象として一般的に、ネットの中古品販売店においてはあまり積極的に歓迎していない、「質問して欲しくない」「見て判断してよ」「見たら分かるでしょ」「載せてる以上のことは分らないよ」、そんなお店が多い印象です。
でも、だからこそ、丁寧できめ細かい接客や臨機応変な対応ができるお店なら他店と差別化できる「付加価値」になり得ます。
例えば、「複数点お買い求めのお客様には値引き交渉応じます!」とか、「お探し物があるお客様、ご相談ください!倉庫にはまだまだ掲載が間に合ってない商品が眠っています!」など。
積極的に質問や相談に対応したり、電話やメールなど気軽に連絡・相談していいんだよ!という姿勢をアピールすることでお客様とのコミュニケーションと会話の機会が増え、自ずと販売機会も増えることになります。
お客様から問い合わせや相談が増えると、ダイレクトに販売機会も増えますし、今後の商品掲載や品揃えや仕入にも影響してきます。
お客様にとっての「馴染みの古本屋さん」にしていただくことも、古書店(古物商)マーケティングの重要なポイントの一つであると思います。
言い換えるならば、小さな古書店においては、お客様にとって「ナビゲーション」「コーディネート」「アレンジ」「プロデュース」など、古書のコンシェルジュやツアーガイドのような役割を果たすことがお店の付加価値となり、販売機会や収益UPを助けることになると思います。
限られた労力の中で付加価値を高めて行くのは本当に大変だと思いますがぜひ頑張ってください。
以上。「ダメ出し!道場」でした!
もっと高く売りたいです。
カテゴリ分け、写真の撮り方、商品説明、マルチメディアなどやることはたくさんあります。でも、全部やるとパンクします。より高く売りたい。希少なものは高く売れます。でもアマゾンで1円で買える本を3000円、5000円で売りたい。中古商品、どこでも買えるものの付加価値はどうやってつけるのか。
それを知りたいです。